()栃木県の市町村合併2004.5.24発表レジュメ)     国際社会学科 坪井知子          

 

高根沢町の現在の状況

 平成16418日、栃木県高根沢町で合併特例法に基づき宇都宮市との法定合併協議会設置の是非を問う住民投票が行われた。投票の結果、賛成票7410票、反対票7195票で、賛成票が上回った。この結果を受けて、高根沢町と宇都宮市の法定合併協議会が設置されることになった。

しかし、すでに高根沢町は南隣の芳賀町と、協議会を設けており、2またをかけて平行して合併協議を行う異例の事態となった。(複数の法定協をかけ持ちしている自治体は、香川県国分寺町、高知県中土佐町があるが、東日本では初めて。)

 

(参考)市町村が合併するためには以下の手続きを踏まなければならない

1合併協議会設置請求、議案の議会での可決 (住民側は有権者の50分の1以上の署名で請求できる)

2合併協議会設置

  *合併についてあらゆる事項を正式に話し合う。合併するために設置は必須。

3合併協定書の調印

4関係市町村議会の議決(合併に関して賛成か)

5関係市町村の県への申請

6都道府県議会の議決

7都道府県知事による決定、総理大臣への届け出

8合併市町村の誕生

 

T合併に関する高根沢町のこれまでの動き

平成15年

  3月  宇都宮地域との協議推進を表明

  6月  宇都宮地域合併協議会に任意参加

11月 研究結果、議会は宇都宮地域合併協議会を離脱し芳賀町との合併に向けて協議会設置求める

 合併に関する住民アンケートを実施(宇都宮市への編入が芳賀町より上回る)

12月 高根沢町議会は宇都宮市と上三川、上河内、河内との1市4町による法定協の設置案を否決

平成16年

2月 芳賀町と2町による法定協設置案を可決

  3月 芳賀町との間で法定協設置

     反発した住民らが住民発議で宇都宮市との法定教設置を直接請求  

*町民有志の「宇都宮市との合併を進める住民の会が、有権者の50分の1とした有効署名を大きく上回る6025人分を集めた

町長が住民投票実施を決定

4月 住民投票実施 賛成票7410 反対票7195

   宇都宮市との法定協設置

 

U「宇都宮派」と「芳賀派」

 住民アンケートによると、高根沢町に住む住民の8割は合併の必要性を切に感じている。しかし、高根沢に合併する相手先として宇都宮地域への編入合併か芳賀町との新設合併を選択するかで、町は二分している。住民投票の結果等をみると、高根沢町に住む住民の多くは、宇都宮市との編入合併を望んでいることが分かる。しかし、一方で町議会は芳賀町との対等合併を推進していることが分かった。

以下に、高根沢町臨時会会議録から、宇都宮派と芳賀町派の各々の主張を簡潔にまとめた。

          「宇都宮派」

「宇都宮市との合併を進める住民の会」

          住民投票の結果や町民の民意と大きくかけ離れた議会の行動

          行財政でのスケールメリット、自治体基盤の安定

          芳賀町とは議会同士の交流はあるが、住民の日常生活の中ではほとんどつながりはなく買い物や通院、職場、交通利便性など考えると生活圏は宇都宮にある

  ・ 芳賀町町内でも「生活圏は宇都宮、真岡にあるのではないか」という議論もある

          「芳賀派」

町議会+「高根沢町と芳賀町との合併を推進する会」

          自治体としての適正規模(身近なコミュニティで物事を決めていく方が住民サービスの向上につながるのではないか)

          行政施策、地形的や文化的類似性が多い

          宇都宮市への編入合併では主体的な町づくりができない

          生活圏は個人的なつながりであって、合併とは関係ない

 

V宇都宮市と芳賀町の反応

高根沢町は現在、芳賀町と宇都宮市との合併協議会を設置し、並行して合併協議を進めているが、当然のことながら最終的にはどちらかに決めなければならない。複数の協議会を設置することは、財政的、人的負担も大きい。高根沢町の考えとしては、あくまでも協議会を並行してふさわしい方を選ぶとしている。

芳賀町側からも高根沢町のどっちつかずの態度に批判や不振の声が出ている。現在までに芳賀町・高根沢町合併協議会会議は2回にわたって開催されているが、高根沢町での住民投票(4月18)の結果、宇都宮市との法定協議会設置決定後の第2芳賀町・高根沢合併協議会会議(4月27)においても、高根沢町の今後の方向性に関しての論議がなされ、合併に関する具体的な議題はほとんど進んでいない。5月25に開催される予定であった第3回協議会会議も、高根沢町がどっちつかずの状態で開催しても無意味ということで期日未定の保留とされた。

一方、宇都宮市側は、高根沢町の参加を歓迎している。しかし、現実的には、宇都宮市もすでに1市3町の合併協議会を設置し、平行して協議を行っている状態であり、将来的に高根沢町も加えての合併までもっていくにはまだまだ先は長いように思われる。

参考

・高根沢町役場ホームページ http://www.town.takanezawa.tochigi.jp/

・芳賀町・高根沢町合併協議会ホームページ http://business3.plala.or.jp/gappei/

・総務省合併相談コーナー http://www.soumu.go.jp/gapei/